“益子らしさ”を考え、伝えるということ。

「“益子らしさ”ってなんだろう?」以前、地域活性化、いわゆる町おこし的な会議があると必ずこの話をしていたように思います。

益子は里山の自然があって、文化財もある、益子焼があって手仕事の町、民芸の町とも言われる、また最近ではカフェやパンの町というイメージも…。「益子って独特の文化があっていいよね」と訪れてくださる方に言われることも多いのですが、では一言で「益子の魅力」を表現しようとすると、いつも困っていました。

2009年に土祭がはじまり、今年、4回目が開催されます。また2013年に「ミチカケ」も発刊されました。そして2016年に道の駅ましこがオープンしました。
正直、今でも“らしさ”を一言で表現するのは難しいですが、土祭やミチカケ、道の駅ができ“らしさを形として伝える”ということができるようになってきたと思います。

もしかしたら、“益子らしさ”には正しい答えなんてないのかもしれませんが、この企画展示では、そのヒントがたくさん散りばめられていると思います。
ぜひ今展示で「益子の“らしさ”」を少しでも感じていただけると幸いです。

風土に育まれる感性が生み出す、手や心の仕事。 風土に育まれる感性が生み出す、手や心の仕事。

伸びやかでやわらかい、益子の風景に溶け込む道の駅ましこ。
その大屋根の下で、『ミチカケ』と「土祭」をもとにした企画展を行います。

『ミチカケ』は、2013年9月に創刊し、2018年3月に終刊するまで、
年2回のサイクルで益子町が発行していた益子の人と暮らしを伝える雑誌です。
そのアーカイブをもとに、「手仕事」と「移住」をテーマにして、
展示や作家の作品/商品の販売、関連イベントを開催します。

「土祭/ヒジサイ」は、2009年に生まれ、3年ごとに開催する、益子の風土に根ざした新しい祭りです。これまでのアーカイブ、特に、3回目の土祭の基礎とするために2014年から全町に渡り地域の方達と進めた「益子の風土・風景を読み解くプロジェクト」を基礎にして、「風景」と「未来」をテーマに、展示や関連した作品/商品の販売、イベントを開催します。

「これまでの土祭」と「ミチカケ」のアーカイブ展の企画、というお題を道の駅ましこからいただき、まず思い描いたことは、「単なる記録の編集」ではなく、過去・現在から、「未来へ」と思いや考えを馳せるきっかけとなるような機会をつくりたい、ということです。
「風景と、未来の物語」というタイトルは、『ミチカケ』最終号の特集テーマでもありました。私たちが先人から受け継いだもの、益子という土地で積み重ねられてきた風土と人の営みの関係性は、私たちの眼の前に「風景」となって、暮らす人の姿とともに現れています。その風景の中で生きる私たちの「今」の営みが、「未来」の風景を形づくることになります。私たちは、風景からどんな風土を読み解き、そこからどんな感受性を育み、なにを生み出してゆくのでしょうか。どんな未来をつくってゆけるのでしょうか。

風土に育まれる感性が生み出す、手や心の仕事。
ぜひご来場いただき、「これまで」の積み重ねを活かす、「これから」のあり方についても、ご教示などいただければ幸いです。

益子町の事業として展開した「土祭」も「ミチカケ」も、ダイレクトに販売に繋がる販促企画として立ちあげたものではありませんが、ものづくりの町としての風土や背景などを多視的に伝える試みを続けてまいりました。
今回の、企画展示では、そういった「基礎」の上に、作り手たちの作品/商品を、知恵や考え、生き方・暮らし方とともにしっかりと伝えながら、「暮らすひと」「つかうひと」に届ける展示販売の企画を中心においています。
ご来場をお待ちしています。

簑田理香
みのだりか|地域編集室 簑田理香事務所 主宰。宇都宮大学地域創生推進機構 特任准教授。
2012年から2016年3月まで益子町観光商工課任期付職員。土祭2012事務局、土祭2015事務局・プロジェクトマネージャー。『ミチカケ』企画創刊・編集人。